小ネタ、および春の国の獣達 (作:シルヴァイン)
まずはかるーく
こねたでごー。
アリス:なあエド、お前のことを師匠って呼ぶ、あの子の事だが……
エド:………フォルテュナのことか?
アリス:そう、その子だ。
エド:何だ?
アリス:………………名前、呼びにくくないか?
エド:はぁ……………何を言うかと思えば…………
アリス:な、何だその顔は!!テュなんて咄嗟に出る音じゃないだろ!!
じゃあ5回連続で呼んでみろ!
エド:………フォルテュナ、フォルテュナ、フォルテュナ、フォルテュナ、
フォルテュナ。
アリス:何故一度も噛まない!?
フォルテュナ:師匠?呼びました?
エド:いや、何でもない。
アリス:なあ、なんであんなに簡単そうに言えるんだ、お前。
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そりゃあ愛の賜物(違
実際呼びにくいと思いませんか。
エルネスト:セレス様!!
セレス:ん、どうかしたかい?
エルネスト:どうしてあの少年に特別目をかけられるのです?
私には疑問です!あれにそんな素晴らしい力があるとは………
セレス:よく聞いてくれたね!!
エルネスト:………………はい?
セレス:あの子はね………
エルネスト:(やはり秘密が…………)
セレス:ルクシスの選んだ私の運命の人なんだ!!
ずる。
エルネスト:せ、セレス様…………?
セレス:初めて会った時………確かに感じたんだ………
ああいうのを本当の運命の出逢いというのだろう!
少しキザな台詞を使ってみたかいもあって彼をイヴェール軍に
引き入れることに成功したんだ、目をかけてしまうことも当然だろう!?
エルネスト:はあ、あの、失礼しました…………
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つまり、脱力系主人公と爽やか軍団長の関係ってこういうことですよね?
あの出逢いは運命の人との出逢いだったんだよね?
あれ、私何か違ってますか。
キャラクター紹介より。
ユーイン=ステュアート
スプリング王国へ絶対の忠誠を誓った、生粋の騎士にして軍の総司令官。
足並みの揃わない四将軍を実力でまとめ、統制している。
ルネ:つまりは実力にものをいわせてねじ伏せているということですね。
ヘルマン:そう書くと途端に酷い方のように思えますな。
ジェラルド:実力でねじ伏せ………
グレン:ふん………
ビアンカ:あの、そんな方じゃないと……
ユーイン:これでも苦労しているんだ。アクの強すぎる部下ばかりでな……
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ユーイン様は最強。ストレス量もきっと最高。
デイジー:ワタシの国では、程度が酷い事を
「ぼっけー」
とか
「でえれえ」
とかいいマース……
リュヌ:ふーん………
フォルテュナ:ん?何してんだ二人とも……って黒板どこから持ってきた。
リュヌ:デイジーの言葉、ぶち切れたとき面白いから……教えてもらってた。
黒板は拾った。
フォルテュナ:あ………そう………。でもデイジーの使う言葉には俺も興味あるなぁ。
デイジー:そ、そうでースか?じゃあもう少し……
「めぐ」とか「かぐる」ってわかりますか?
フォルテュナ:メグ!?
デイジー:そうじゃないでーす。ぐを上げて
「めぐ」
おばあちゃん達の言葉で言ってみると……
「ちょっとこれめーでーてー」ってなりまーす。
リュヌ:めーでーてー!?何かおめでたいの?
デイジー:えっと、答えは、主に両替……大きなお金を崩すことでーす。
壷が壊れた、は「壷がめげた」。
壊れる、は「めげる」っていいまーす。
フォルテュナ:うわ、聞かなきゃわかんねぇ……
デイジー:ワタシの友達、うっかり外で使っちゃって、通じなくて恥かいたでーす。
「かぐる」っていうのは「ひっかく」って意味です。
小さな子供達の喧嘩の時など、「だれだれちゃんがかぐったー」って
言ってまーす。
リュヌ:へぇー………
デイジー:ワタシの友達、「めぐ」の人とは違う方ですけど、
「かぐる」は標準語だと最近まで信じてました。
他に面白いのは、「まあじゃろうぜぇ」とか、「そ、」とか……
(書いています)
フォルテュナ:まあ………?
デイジー:まあじゃろうぜぇ。
地域によってイントネェーション違うみたいですけど、
「あーあ呆れた」とか「まぁー」といった、ちょっと馬鹿にしたような
言い方です。
おばあちゃん世代が良く使います。
そ、は北部でしか使われていないらしい表現でーす。
そ、といって何かを出されたら、
「どうぞ」とか「食べてください」とかそんな意味でーす。
あんまり丁寧な表現ではないでーすね。
ワタシの南からきたお友達、そ、って言われてもどうしていいか
分からなかったそうでーす。
フォルテュナ:へぇ……南とか、場所によっても違うんだな。
デイジー:若干違いまーす。例えば
「来て下さい」でも「きんちゃい」「こられー」
「きてみねー」「こられんさい」など……
ワタシ達、若い子は標準語な事もありますけど……
リュヌ:じゃあ、ちょっと喋ってみてよ。
デイジー:え、何をですか?
リュヌ:何が良いかな…………フォルテュナ考えて。
フォルテュナ:何故俺が……………………
じゃあ、『雨ふりそうだから、傘を持っていったほうが
よくないですか?』
リュヌ:いきなり微妙な例文だね。
フォルテュナ:うるさい。じゃお前考えろよ。
デイジー:え、えっと、じゃあワタシ達若い子達の喋り方でいきマース。
『雨がふりそうじゃけえ、傘持っていったほうがええんじゃないかな?』
フォルテュナ:え?年寄り?
デイジー:じゃけえって、若い子でもいうんでーす。
リュヌ:おもしろいよね。じゃあ……
(以下、延々と続く)
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私らのところではこんな風に話すんじゃけど全然変に思うたことはないわあ。
これが私らにとって普通じゃけえ!!
ふざけてごめんなさいでした。
では本編にどうぞ。
『一番性格が悪いのは誰か、理由を含め40字以内で書きなさい。 (20点)』
深く暗い夜。しかし、彼が仕事を終えるにはまだ早い時間だった。
それにも関わらず。さて、とユーイン=スチュアートは手にあったペンを置いた。
「ご苦労様です。」
秘書官、ウィリアムが差し出してくるカップを受け取ると中身はコーヒーだった。
珍しい、と思考。彼は紅茶を入れるのが非常に巧く、彼自身も紅茶を好むので大抵中身は紅茶なのだが。
しかし一口啜って、やはり心中は賞賛の言葉で満たされた。香り高い、好みの味だ。
美味しい、と言えば彼もお褒めに預かり光栄です、などと返した。
書類を揃える紙の音と同時、僅かに降りた沈黙。
「今日はお早いのですね。」
「ああ……彼が気になるのでな。」
ふっ、と、二人は共犯者めいた笑みを浮かべた。
「お気を付けを。手負いの獣は、手におえませんよ。」
「獣は、力で捻じ伏せて言うことを聞かせるものだろう。」
その答えに、ウィリアムは完璧な笑みで、敵国の将軍を見送った。
机の上で湯気を立ち上らせながら、コーヒーが冷めていく。
「本当に、人の悪い。」
コーヒーと、彼の出ていったドアとを交互に見て、ウィリアムは先程彼に見せたものとは違った質の笑顔を浮かべる。
「彼が嫌がるだろうことが分かっていてそうするなど、」
でも彼のそんな所が、敵ながらに割と好きだったりするのだ、と一人苦笑した。
敵じゃなかったなら、理想の上司として仕えたろうに、と。
「ユーイン様」
灯りが落とされ、月明かりだけが照らす薄暗い廊下を歩いていると、後ろから呼びとめられた。
誰だか確かめる為に、振り向く必要などない。慣れ親しんだ声で分かる。
「どうした、ジェラルド。」
だから、名を呼んでから振り向く。
彼の金の髪が、月の光を受けていた。
「あ、い、いえ……」
用があるから呼んだのだろうに、彼は途端に迷うような表情を浮かべた。
「………?どうか、したか?」
あの、ええと………など随分と迷い、言葉を捜した挙句に、ようやく彼は言うべきことを見つけたらしい。
「すみません!僕の失態でこんな………!」
何が、とは聞く必要がない。勿論今日の戦いのことを指している。
彼が少し選択を誤った、と言うより隊全体の動きに乱れが出たのは確かだ。
だがしかし、今日の戦いで彼が立派に、期待以上の働きをしたのも事実。
ユーインはそう難しく考える必要もなく、口にした。
「いや、お前の失態だけじゃない。私の読みも甘かったし、ルネも策が未熟だったと言った。全体が少し油断しすぎていた。それだけだ。気に病む必要はない。」
- 作者様より -
スプリングの薄暗い雰囲気を出そうとして見事玉砕しましたがとても楽しかったです。
グレンさんがユーイン様に対して貴様だったりお前だったりするのは仕様です。
ユーイン様はきっと
「折角お揃いだったのに・・・」
とか思っているに違いありません。
趣味全開でごめんなさい。ヘルマン氏がとても大好きです。
では。またどこかでー。